3日目 伊根〜鳥取〜松江


 伊根から日本海沿いを走るが、風雨が強く、単に走るのもつらいのに、海岸沿いのワインディングロードを走るのは時に恐怖心を伴う。
 コーナリング中に風を受けると、低スピードとはいえ、フロントタイヤに足払いをくらうかのような感覚を受けるのだ。

 長距離ツーリングには雨はつきもので、あまり苦に感じないほうだが、寒さと風がともなうと、ほんとうにつらい。
 オートバイで旅するのが好きで、今回も走りを中心としたツーリングにしたが、本当に自分が好きなことなんだろうかと疑問を感じたりもしてしまう。

 道路の気温表示によると、4〜6℃。防水のグローブをしていたが、あまり保温性が無く、指先は完璧に凍えていた。かっこ悪くても、ハンドルカバーが安全で、操作性からいったら、スポーティだと思った。
 普段は重く感じないハーレーのクラッチも、手が凍えるとやはり重い。
 雨中の走行でのシフトミスは時に、致命的でもあるだろう。

 右手には、日本海が荒れ狂っている。写真を撮りたいが、停まれる場所も無いし、気力もなかった。


余部鉄橋(兵庫県香住町)

 この鉄橋は、明治45年(1912年)に2年の歳月をかけて建築されたとのこと。トレッスル式というらしい。
 ここから内陸に向かった方にNHKのドラマ「夢千代日記」の舞台になった湯村温泉があり、ドラマの中でも橋がでていたことがあったと思う。
 かなり以前のドラマであるが、被爆による白血病の温泉芸者である主人公を吉永小百合が演じていた。映画にもなった。
 こんな高い橋(高さ41メートル)を列車が走るなんて、おそろしいと思っていたが、1986年突風により、転落事故が起こってしまった。転落した列車がカニ缶詰工場を直撃するという大惨事だった。
 雨が降っていて、風も吹いていたので、あまりよく見なかったが、鉄橋の下には駐車場があって、橋がよく見えるらしい。

鳥取砂丘
 風雨が強く、立ち寄るのはやめようと思ったが、時間的に余裕がありそうだったので、立ち寄ってみた。
 海に向かって砂丘が広がっていたが、目の前に大きな丘があった。歩き出してしまうと、登らずにはいられない。
 ヘルメットをかぶったまま歩く。ジェットヘルはこんなとき便利だ。突風が吹くと手が痛い。雹(ひょう)も降っていたようだったが、手に当たったのは砂だった。
 以前に浜名湖付近の人工砂丘を見たせいか、意外と小さいという印象だった。
 丘から荒れる日本海を見ながら、しばらく立ち尽くす。

 この日は松江のビジネスホテルに泊まる。
 夕方には雨はあがっていた。
 みな美という料亭でちょっとリッチな夕食をとる。前日パスしてカニを買うことができなかったので、カニの一品も追加。
 夜の松江の町はライトアップされていた。駅からは少し離れた繁華街。このあたり、「京店」(きょうみせ)というらしい。夜歩いても楽しかった。